デブサミ2020に参加してきた(2日目) #devsumi

 年に一度の技術者の祭典、Developers Summit 2020(デブサミ)へ参加した。かなり遅くなってしまったが、このエントリでは2日目に参加したセッションについて簡単にまとめと所感を書いていく。なお、公式にて登壇資料とtogetterまとめへのリンク集を設置済み。

14-D-1「エンジニアよ、今こそ社会課題に立ち向かおう!」(関 治之[Code for Japan])

セッション概要はこちら。311をきっかけにCode for Japanを立ち上げ、様々な社会課題を官民が「共創」してテクノロジーとデータで解決してきた登壇者によるセッション。

 エンジニアの知見を行政に上げていくことは社会を良くするために重要。そのために、自分の技術を社会課題解決のために使っているか?という問いかけがあった。エリック・レイモンド「伽藍とバザール」を例に挙げ、変化に弱い「伽藍モデル」である従来型行政を、様々な課題へ相互連携で対応できる「バザールモデル」へと変化させたい、そのためにオープンソースカルチャーを導入し、技術により変えていけるとした。実例として挙げたのは台湾のマスク在庫オープンデータを基にしたアプリケーション。台湾のデジタル担当大臣はギーク上がりでハッカソン等を実施した成果とのこと。この流れに参加することで技術者は自分の技術を磨く機会にもなり、社会と個人の相互のメリットになるのがとても良いと感じた

14-F-2「職種の垣根を越えるコミュニケーションのススメ」(池村 和剛[ゆめみ])

セッション概要はこちら。Qiitaのアドベントカレンダーにスポンサーとして参加しているのを知っていたゆめみさんならではの社内制度が聞けたセッション。あまりに制度の話が面白く、終了後に質問を長々としてたら、次のランチセッションの弁当が無くなってしまった…という、一番印象に残ったセッション

 話の中心は、ゆめみ社内で運用している意思決定プロセス「プロリク」について。社内で勉強会やサブプロジェクトを立ち上げる際にGitHubに提案を記入し、コメントや意見をプルリクとして受けながら改善し、実施するという仕組み。改善はあっても否定は無しというルールで、これまで800件ぐらい挙がっているとのこと。デザインを中心にクリエイティブな勉強と蓄積をやる、未来に向けた技術開発とビジネス開発の両方をやるといったテーマに対し、海外研修や機材購入、社内でのワークショップなど様々な形態で投資されていることが紹介された。

 この取り組みはSlackのパブリックチャネルを通じて共有され、また「結果責任(成果)を問わないが、遂行責任は問われる」「すべての活動を否定しない」という会社トップからのスタンスが貫かれているという。他部署メンバとの雑談により社内コミュニケーションが活性化しているというメリットもあるようだ。また、この活動により組織全体が「自律的」に「分散・協調」できる組織となっているとした。

 終了後に個別に質問した中でポイントと思ったのは「成果の大小を問わない」「どんなテーマでも通るという安心感」。小説本だろうと感想が3行だろうとアウトプットさえあれば会社費用になるという。あと、一番びっくりしたのは「予算制限なし」という点。経営サイドからしたら怖いはずだけど、実事業とのバランスが自律的に取れているらしく問題になっていないとのこと。また「プロリク」で提案したテーマは時間内でも時間外でも取り組めるが、時間外の場合は就業時間にカウントしない代わりに成果の買い上げをしたこともあるという。

 セッションでは触れられなかったが、就業時間の10%は自由な勉強に充てていいらしい(自社は半分の5%…)。エンジニアが楽しく学べる環境を作りたいと日々考えている中で、非常に刺激的なセッションだった。

14-C-4「エッジコンピューティング、エッジAIの可能性」(中村 晃一[Idein])

セッション概要はこちら。本セッションではエッジコンピューティングのメリットと、エッジでの機械学習/AIプラットフォーム「Actcast」の紹介がされた。

 コンピューティングリソースはエッジとセンターへの集中を繰り返しているが、最近はクラウドからエッジに注目が集まっているらしい。その理由として下記を挙げた。

  • データセンタ・回線のキャパオーバー:コネクテッドデバイスの急増によるデータ量・計算量の増大により帯域の上限に達している
  • プライバシーへの関心の高まり:GDPRなどによりデータをクラウドに集めにくい状況が発生している
  • 超低遅延化への需要増大:自動運転やドローン制御のようなリアルタイム性、5Gによる無線高速化による有線ネットワークの相対的速度低下→回避策としてエッジ側にコンピューティングリソースを分散配置

 後半は「Actcast」の特徴について。エッジAIを実現するRaspberry Pi用ソフトウェア(SDK)、多数のデバイスへの遠隔デプロイや管理が可能なダッシュボードを無償で提供し、アプリストアへの課金を収益とするビジネスモデル(手数料は売上の30%とのこと。一昔前のスマホアプリと同じレベル)とのこと。RPiの小規模CPUでGPGPUと同じ機能を提供するコンパイラ技術に特徴があるとのことで、安価なRPiを大量に使ったエッジAIアプリケーションの実装が可能となっている。リアルタイムかつ高速な顔認証デモもあり、非常に面白いと感じた。

 小型マイコン上のAIについては最近M5Stickというライバルもあり、非常に安価で試せるようになっている。技術者を集めてエコサイクルを作るまでの間では「試せる」のが重要。インフラ面までカバーしているサービスは珍しいし、ちょっと使ってみたいと感じた。

14-B-6「サービスメッシュは本当に必要なのか、何を解決するのか」(Yasuhiro Tori Hara[Amazon Web Services Japan])

セッション概要はこちら。サービスメッシュのメリットや必要性を説きつつも、そもそもマイクロサービスが必要かどうか冷静に考えるべき、というフラットな視点のセッション。

 まず、マイクロサービス化に期待される効果を、モノリシックなシステムとの比較で説明された。ポイントは下記の通り。

  • 変更による影響範囲の局所化⇔影響範囲が大きい
  • モジュール境界の維持にしやすさ⇔モジュール構成の難しさ
  • 独立したデプロイとスケーリング⇔非効率なスケーリング。テスト/ビルド時間の増大化
  • 自律的チームによる開発・運用⇔関係者間調整のオーバーヘッド

 ただマイクロサービス化を進めていくと、課題も発生してくる。

  • サービスの適正な分割とは?
  • テストの難しさ(スコープが見通しにくい、ということかと思う)
  • 変更による影響範囲を自サービス内に収めにくい(他サービスへ影響)
  • サービス間通信の信頼性(失敗前提=防衛的実装の必要性)
  • サービス間通信の可観測性(複数サービスが絡む障害時の切り分け)

 この中でも特に、サービス間通信の信頼性・可観測性を確保するための方策としては幾つか存在する。

  • 共通ライブラリ:アプリ改修が必要。パフォーマンス低下、またライブラリを中心に密結合が発生。
  • プロキシへのオフロード(サービスメッシュ=Envoy):アプリ改修は不要。但しプロキシとアプリが密結合が発生。またプロキシ設定変更時にサービス再起動が必須でダウンタイム発生。
  • AWS AppMesh:プロキシ設定の動的変更が可能な、サービスメッシュ。

 結論としては、マイクロサービス化はメリットと運用の複雑さを天秤にかけて検討する必要がある、ということだった。

14-C-7「Hackが好きなエンジニアが組織をHackしてみる考えと実践を経てきたヒストリー」(萩原 北斗[うるる])

セッション概要はこちら。Hackを「構造におけるスキマを知る(構造の理解)」と「構造のすき間を埋める(設計実装/改修)」と定義し、雰囲気とあやふやなKPIに支配されがちなマネジメント業務(開発以外の場)に対してHackを適用してみた、その経験を共有するセッションだった。

14-F-8「家族型ロボット「LOVOT」から考えるテクノロジーの裏側とその未来」(林 要[GROOVE X])

セッション概要はこちら。家族型ロボット「LOVOT」(らぼっと)を開発する林氏によるセッションは、壇上にふたりのLOVOTがいて常に歩き回ったり声を上げたりする、微笑ましい雰囲気のセッションとなった。主なテーマは「そばにいて、何もしない存在」であるLOVOTがどうして人に癒しを与える存在になっているか、について。

 人間はかつて生き残るために集団を形成する必要があり、そのために「孤独感」「承認欲求」といった感情を獲得した。現代は集団でなくとも生きられるようになったが、一方で獲得した感情は残ってしまう、そのギャップを埋める存在としてペットが人気となっている。そして住宅事情などによりペットを飼えない層に対してロボットのニースがあるとした。

 だがロボットには「3か月の壁(飽きてしまう)」があり、これまでのロボットはなかなか超えられなかった。最初の3か月間は好奇心によりドーパミン分泌が盛んになり、興味が持続する。その間に愛着心が形成されてオキシトニン分泌が旺盛になれば、飽きずに興味を持ち続けることができる。LOVOTでは愛着心形成のために、瞳の色やパターンを豊富にしたり、発話する声はサンプリングでなくリアルタイム合成音声にしたり、技術により個性を持たせている

 周りにいる人の顔を見分けたり、見回りや留守番をしたり、着替えを喜んだりといったような家族として溶け込めるための機能もある。そのためにCPUを4つ搭載し、顔認証や空間認識・地図作成といった高度な機能をエッジで実現している。

…などと難しいことを言わなくても、そこに存在するLOVOTはとてもかわいらしく、セッション終了後も写真撮影する人が絶えなかった。それが全てだと思う。

 

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