2018/7/11に開催されたスマートスピーカー関連の勉強会、「ビジネス活用セミナー & VUI体験ワークショップ」に参加してきました。会場は、浅草橋にある株式会社ISAOさんの本社会議室。無人受付を通り抜けた先にはオープンキッチンがあったり、ダーツがあったり、素敵なオフィスでした。当日の様子は株式会社ISAOさんの公式ブログに記事が公開されてます。早い!すごい!なので、自分はブログには載ってないことを書いていきます。
「サンプル発話からVUIを考える」
by 松本 紗良さん(ハンズラボ株式会社)
日本語版Alexa発売直後に公開された、東急ハンズの公式スキルの開発者さん。当日のスライドがここで公開されています。ありがとうございます。
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スキル開発経緯と主な機能
Amazonさんから先行事例としてのリリースを打診され、もともと会社自体がawsにフルコミットであったこと(+企業トップの判断)から、小売(実店舗)におけるお客様への新しいユーザー体験の提供を目的としてリリースを決定されたとのこと。
1次ローンチ時は、元々Webサイトのコンテンツとして管理していたデータを活用した機能を提供、2018年2月には新機能として「店舗の営業時間を教える」を追加した。
開発して分かったこと
aws経験者が多かったこともあり、機能開発自体は2か月ほどで実装できたが、そこから公開までにさらに2か月ほど要したという。
苦労したのは「サンプル発話」。Amazonは1機能に対し30パターン位のサンプル発話を登録することを推奨としている。実際にやってみると、言い回しを変えただけでは到達できない。利用者がするであろう様々な言い方を考えることにより、本当に必要な機能がわかったり、例えばホームカードを活用する等、どのように情報提供するのがベターかがわかったりする。なので、色々なスキル開発では、サンプル発話を沢山考えることをお勧めしたい、とのこと。
今後のこと
VUXは初めて使う人に合わせると説明が多くなり、リピータに合わせると初めての人には不親切になってしまう。なので、両方が幸せになるVUXを考えたいとのこと。確かに両者のバランスは難しそうです。
このほか、スマートスピーカーの実店舗利用に向けて何が必要か、あるいはバックヤードで使うのもいいかも、画面付も出てきたがVUIは追いつけるか(画面がメインにならないために何ができるか?という意味かな)、というお話がありました。
Q and A
「ユーザ層の分析はできるか?」という質問があり、回答として「アカウントリンクの機能を入れ込めばWebサイトと連携してデータは取れる」というお話がありました。まあ、単体では難しいよなあ。
おまけ
Amazonはスキルを公開した人に月替わりのデザインのTシャツをプレゼントする企画をやっていて、松本さんは最初のバージョンのTシャツを着てらっしゃいました。デザインもおしゃれだし、超レアものだし、うらやましい限り。
「アメリカ生活で見つけた、スマートスピーカーの普及と日本の未来予測」
by 中嶋 あいみさん(株式会社ISAO)
Amazon Alexaをはじめとするスマートスピーカー関連のマーケターさん。最近もお仕事で海外に長期滞在されていたとのことで、米国でのスマートスピーカーの動向などのお話を聞くことができました。
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米国のスマートスピーカー市場について
ある調査によれば「4人に1人はオンラインショッピングで何らかの音声機能を使ったことがある」とのことで、スマートスピーカーの普及も急拡大中。出荷台数ベースではあるものの、2017年は2700万台、2018年は4300万台といった具合。

使われ方も、リビングに1台から各部屋に1台という感じになってきている。よく使われるアプリケーションは「部屋のライトの点消灯」「ニュースの読み上げ」「道路情報(自動車通勤が多い土地柄から)」、あと「子供の話し相手になるアプリ」もニーズが大きいそう。
日本未発売デバイスについて
Amazon Echoシリーズでは「Echo show」「Echo look」「Amazon Tap」がある。特に、ファッションコーディネートをしてくれる「look」には、本体にAI機能が内蔵されており、レコメンデーションに活用されているとのこと。また、Alexa内蔵のFire TV Cubeが最近米国で発売開始されたが、すでに技適証明を取っているという話もあり国内上陸が待たれます。
この他、「WORK WITH ALEXA」というAlexa対応の家電などもあり、国内で約60、米国では1000以上(!!)の機器が対応しているとのこと。そのため、米国ではスマートホーム化も進んでいて、子供の見守り機器や低温調理器がAlexaが対応していたり、ダラスにはAlexaのスマートホームが体験できる住宅展示場もあるとのこと。楽しそう!
マネタイズのこと
Alexaのマネタイズも米国が先行している。手段としては「スキル内課金」と「Amazon Pay」経由の2種類が提供されており、この他優れたスキルにはAmazonによる報奨制度もある。これらは間違いなく日本にも導入されるので、今のうちから対応方法を検討していくべき、とのこと。
Nextキーワードは「子供に優しい」
スマートスピーカー普及が進む米国では、子供に悪影響があるという社会問題となりかけた事もあり、AmazonもGoogleも対応策を出している。
Google Assistantでは、命令口調になりがちなスマートスピーカーへの指示を「pretty,please」といったような優しい言い方をするように誘導している。
一方、Amazon Alexaは子供専用の機器「Echo for Kids Edition」を発売した。子供向けスキルのみ使用可能、子供向けコンテンツの提供、保護者向けモニタリング機能といった特化機能を持つ代わりに若干割高(普通のEchoより20ドル高い)ということもあり、今のところはそんなに受け入れられてはいないようだ。
Q and A
「日常生活でルーティーンにしやすいスキルは使われやすい」とのこと。例えばベッドサイドに置いたEchoなら、寝たままできるヨガとか、寝る前に使うスキルとか。
「音声による個人認証はGoogleで進んでいるが、精度も低くまだ実用には至っていない」とのこと。特に法人利用を想定すると、1台の機器で複数名が使用することもあるため、個人アカウントに依存する現在のスタイルのままでは厳しそう。
おまけ
「Google Assistantはアシスタントに徹する感じがあり、Alexaは人格のある人という感じがあるのが大きく異なる」と言われたのが印象的。普段から使いこなしているからこその感想ですよね…!
「VUIデザイン (音声ユーザーインターフェース) を作ってみよう」ワークショップ
後半は数名ずつに分かれて、VUIデザインの設計の基本をグループワークで学ぶワークショップを行いました。私のグループでは「子供と一緒に歌を歌えるスキル」というテーマで、会話による一連の流れを作っていきました。
同じスキルの会話の流れを考えているのに、人によって全く異なる会話の流れが出てきます。音声での指示をスムーズにするためには、自由度が無いほうが良いこともあるとか、複数人で考えることによる発見が色々あって、それにより良いVUIになることが実感できました。
ワークショップの最後にまとめとして、色々なコツを教えていただいたので、覚えている範囲で書きます。
- ユーザーテストの重要性…「開発者が想定していない発言をされる」ことを見つけ、対処を行うのに役立つ。なるべく多くの人に使ってもらうのがいい。
- 「ベストパス」に導くための誘導尋問…より少ない会話で適切な回答ができるようにするために、質問文に工夫が必要。
- 「ヘルプ」「エラー(最初に戻る)」をパスに見込んでおく…パスを整理するのに役立ちそう。
まとめ
セミナー終了後の懇親会も、色んな話をして盛り上がりました。TypeScriptでSkill開発をしているという人に巡り合えたのが、特に収穫でしたね(Qiitaのブログで勉強します!)。
あと、当日Twitterにも書いたのですが、主催の株式会社ISAOさんのホスピタリティの高さがすごかったです。めっちゃお話できて、本当に楽しかったです。また機会があればお邪魔したいと心から思いましたし、自分の会社もこんな風になるといいなあ~と思いましたね。お疲れさまでした!